BlenderやFreeCAD等、高性能なモデリングソフトが無料で手に入る今、3Dプリンターで自作のアイテムなどを作ってみようという方も多いのではないでしょうか?
3Dプリンターの普及により、製作外注をするとコストがかる複雑な形状の作品も、3Dプリンターで安く簡単に造形できるようなりました。しかし、いくら安いといっても3Dプリンターは最低数万円はするため、家庭や個人でとしては相当に高価な買い物となります。購入後に後悔しないよう、自分の目的に合った3Dプリンターを探したいですよね。
今回は、僕が3Dプリンターを活用してロボット開発や趣味の作品製作をしてきた経験も踏まえて目的にあった3Dプリンターや各3Dプリンターの特徴、必要な道具についてご紹介していきます。
この情報が皆さんのDIYライフに役立てると嬉しいです。
長い記事ですのでブックマークをしていただくと便利だと思います。
3Dプリンターにはどんな種類があるの?
3Dプリンターには様々な造形手法があり、それぞれに特徴があります。
金属が造形できる!!造形スピードが早い!!でも価格が高い!等の得意不得意があるわけですね。
家庭で使われるのはFDM方式と光造形方式の3Dプリンター
5つの種類の造形方式を紹介しましたが、皆さんに特徴を知っていただきたのはFDM方式と光造形方式の3Dプリンターの2種類です。
家庭用には安価・小型・比較的管理がしやすいFDM方式と光造形方式の3Dプリンターが使われます。ランニングコストが低いことや、素材の持ちが長いことも使いやすい要因となっています。
(僕も粉末燃結方式を個人で所有とか憧れるけど高すぎて無理。)
また、有名メーカーのFDM方式や光造形方式の3DプリンターについてはブログやYoutube等で多くの情報が公開されているため、トラブルが起きた際に解決しやすいという初心者にとっては大きなメリットがあります。
家庭で普及している3Dプリンターは安価に手に入るFDM方式と光造形方式
FDM方式3Dプリンター
FDM方式の仕組み
FDM方式は、フィラメントと呼ばれる糸状の樹脂素材を熱せられたノズルで溶かし、ソフトクリームの様に積み上げて部品を作ります。
1回で積み上げる層の厚みが表面の滑らかさに繋がります。
低価格帯の3Dプリンターの多くが層の厚み0.1mm~0.4mm程度で調整ができ、1層が薄いほど造形時間が長くなりますが、表面がなめらかになります。
FDM方式の特徴
FDM方式はAmazonや楽天等で簡単に購入でき、価格も1万円代から安価に購入することができます。
3Dプリンターの普及の第一歩となった造形方式で多くの人がFDM方式の3Dプリンターを使用しているため、インターネットに多くの情報が転がっていてトラブルの対処がしやすいです。
(HARD OFF等の中古屋さんでも店頭に並ぶようになり、一般家庭への普及が伺えます。)
ABS、PLA、PETG、TPU等沢山の種類のフィラメントがあり、用途に合ったフィラメントで目的の部品に強度や柔軟性を持たせることができます。
FDM方式の3Dプリンターがおすすめな人
- 強度が必要な部品を安く作りたい人。
- 大きめの作品を造形したい人。
- 様々な色や特性を持った素材を使い分けたい人。
- 子供と一緒に使う等、遊びと教育を織り交ぜて安全に使いたい人。
- 本体もランニングコストも安くとりあえず3Dプリンターを触ってみたい人。
光造形方式3Dプリンター
光造形方式の仕組み
光造形方式の3Dプリンターは紫外線で固まる液状の素材(レジン)に紫外線を照射して造形を行います。
光造形方式の3Dプリンターには2種類造形方式があり、LCD方式とSLA方式と呼ばれます。
この2種類では紫外線照射方法が異なり、それぞれに特徴があります。
LCD方式
LCD方式の3Dプリンターは面で紫外線を照射してレジンを硬化します。
2万円代から存在する格安光造形機のほとんどがLCD方式となっています。
格安のモデルでも1層の厚みを0.01-0.2mm程度で調整でき、同価格帯のFDM方式の3Dプリンターと比較して、圧倒的に滑らかな造形ができます。
SLA方式
SLA方式の3Dプリンターは紫外線レーザーを照射してレジンを硬化します。LCD方式の3Dプリンターは面で紫外線を照射するのにたいして、SLA方式では点でレーザーを照射します。
SLA方式の有名機Form3では一層の厚みを25 – 300μmで調整でき、超高解像度な造形が可能です。
SLA方式は高価で、一例に出したForm3では本体価格が70万円もします。フィギアを作成する会社でも使われている業務用マシンです。
LCD方式とSLA方式の解像度の違い
LCD方式とSLA方式では輪郭の滑らかさが異なります。LCD方式は液晶ディスプレイにより紫外線の照射部分を管理しているため、ディスプレイのピクセル数が解像度に影響します。SLA方式では紫外線レーザーの照射部分を動かして造形するため、輪郭をなぞるように紫外線を照射することができLCD方式よりなめらかに造形できます。
下の図は、それぞれの方式で小さな球や円を造形した場合の断面の例です。
光造形方式の特徴
光造形方式の3Dプリンターは同価格帯のFDM方式に比べて高解像度な造形ができます。
LCD方式では紫外線を面で一気に発光するため、造形時間はZ軸方向(高さ方向)のサイズにのみ影響されます。そのため、プラットフォームの平面内に収まる数であれば1個でも10個でも造形時間は変わりません。(SLA方式でもそこまで時間は変わらないらしいです。)
- FDM方式で1個1時間かかる部品を10個作ると約10時間かかる。
- LCD方式で1個1時間かかる部品をプラットフォームの同一平面上で10個作ると1時間かかる。
素材となるレジンは耐久性が高い”タフレジン”や柔軟性がある”フレキシブルレジン”等がありますが、FDMの素材であるフィラメントと比べて種類や色のバリエーションが少ないです。また、タフレジンやフレキシブルレジンの様に特殊なレジンは500g~1000gで6000円以上するものが多く高価なものになります。
また、レジンや洗浄用のアルコールに関しては使用時にマスクと手袋をしたり、換気をする等の徹底した管理が必要です。
初心者の方にはアルコール洗浄を必要としない”水洗いレジン”がおすすめです。
レジンに関しては、種類・特徴・注意点を紹介しているので気になる方は是非見て下さい。
光造形方式の3Dプリンターがおすすめな人
LCD方式では、Z軸方向(高さ方向)のサイズでのみ造形時間が変化するため、プラットフォームの平面内に収まる数であれば1個でも10個でも造形時間は変わりません。そのため、小さな部品を量産する方には非常に便利です。
また、LCD方式とSAL方式の解像度では分かりやすい様に極端な一例を示しましたが、LCD方式でも十分きれいです。(研磨やサーフェイサーを吹けば3Dプリンターで作ったか分からないほど滑らかに仕上がりました。)僕がLCD方式の3Dプリンターで作った作例のリンクです。
- フィギア等の細かい造形が必要な作品を作る人。
- 高解像度な部品を造形したい人。
- 小さな部品を量産する人。
- アルコールの管理や換気等、徹底した作業環境の管理ができる人。
おすすめのFDM方式3Dプリンター
初心者におすすめ
僕が初心者におすすめしたい3Dプリンターは完成品の3Dプリンターです。
組み立て方式の3Dプリンターにはとても良い性能を引き出せるものも沢山有りますが、調整に時間がかかるので、造形物を作ることに専念したい方は完成品を購入することをおすすめします。
完成品の中でまずおすすめしたい3DプリンターはXYZのプリンティングの”ダヴィンチPro”。
ダヴィンチProは、低価格帯の3Dプリンタープリンターでは珍しくオートキャリブレーション機能が付いていて、プラットフォームの水平のチェックをしてくれます。
購入後、オートキャリブレーション後のプラットフォームの水平・原点調整だけで綺麗に造形してくれて非常に楽でした。
付属のスライサーも直感的で分かりやすかったです。
あと面白いのが、別売りのレーザー彫刻ユニットを取り付けるとレーザー彫刻ができるようになることです。
購入前の注意点としては、サイズと重量です。
サイズは468 x 510x 558 mmと大きめのため、購入前にスペースを確保しておく必要があります。
また、重量が25kgとそこそこ重いため一人で運ぶのは結構大変でした。
もう一つ、初心者でおすすめする完成品のFDM方式3DプリンターはFlashForgeの”Adventurer”です。
多くのYoutuberがレビューを出している言わずと知れた有名機。
ダヴィンチを使っている僕が思う、Adventurerの羨ましい部分は、プラットフォームが取り外し可能で、造形物を簡単にはがせるところです。
普通の3Dプリンターでは、造形物をプラットフォームから剥がすときスクレーパーで力技で取り外しをするのですが、Adventurerのプラットフォームは柔軟性があり、取り外しができるため、製氷機から氷を外すようにプラットフォームを歪めれば造形物が容易に取り外しできます。
安い組み立てモデルでのおすすめ
安い組み立てモデルでは、ANYCUBICの”MEGA-S”がおすすめです。
組み立て方式と言っても、ほぼ完成状態で送られてきますし、筐体自体も板金で丈夫に作られていて安心です。
複雑な形状を造形したい人におすすめ
複雑な造形をしたい人におすすめなのが、デュアルヘッドタイプの3Dプリンターです。
2つのエクストルーダー(ノズル)が付いていて、複数の素材で1つの造形物を作ることができます。
便利なのが、可溶性フィラメントをサポート剤として使う造形。
複雑な形状の部品を造形するとサポート材が除去しにくくなりますが、可溶性フィラメントをサポート材として用いる事により普通じゃ綺麗に取れないようなサポートも溶かして除去できるようになります。
僕は2年間ほど”zortrax m300 dual”というデュアルヘッドタイプの3Dプリンターを使っていましたが、水溶性サポート材を使って造形することにより、造形後に水に漬けておくだけでサポート材が除去できるので非常に楽でした。
おすすめの光造形方式3Dプリンター
安価で初心者も購入しやすい
光造形3Dプリンターで手を出しやすいのが2万円代のELEGOO Mars 2やANYCUBIC Photon S等が挙げられます。これらの格安モデルはLCD方式で下記の2つの3Dプリンターは2Kの解像度となります。
格安モデルの光造形機に関しては、どのモデルもあまりスペックが変わらない気がします。
なので、格安モデルの光造形機を購入するときに見てほしいのは造形可能範囲の違いです。
下で紹介しているELEGOO Mars 2とPhoton Sで比較してみますと、XY平面の造形可能範囲が大きいのは ELEGOO Mars 2 、Z軸(高さ)方向に造形可能範囲が大きいのはPhoton Sとなります。
LCD方式の特徴で紹介しました通り、LCD方式の造形時間はZ軸方向の高さのみが影響されます。
そのため小さな部品を量産したい人は、プラットフォームのXY平面上により多くの部品を配置できる ELEGOO Mars 2の方が向いていると言えます。
とはいえ、そこまで気にする方は少ないと思うので自分の好きなデザインで選ぶのも良いと思います。
今回紹介した2つは有名モデルなのでインターネットに沢山情報が有り初心者におすすめだと思います。
(僕自身もPhoton Sの前のモデルであるPhotonを使っています。)
超高解像度で造形したい人向け(有名SLA方式機)
一般家庭ではまずお目にかかることは無いSLA方式の3Dプリンターたちです。(僕は金銭感覚バグってるのでお金をためてForm3を購入したいです。)
本体価格ももちろん高いのですが、純正レジンも高価なのでランニングコストも高いです。
ただ、購入できない人でもノーベル1.0AやForm3の造形動画とか見ると、とても面白く感じると思います。
3Dプリンター本体の他に必要な道具は?
FDM方式3Dプリンターに必要な道具
光造形方式3Dプリンターに必要な道具
あとがき
今回は各3Dプリンターの仕組みや特徴、おすすめの3Dプリンターを紹介させていただきました。実際に使用してきた経験も踏まえて記事を書かせていただきました。「用途に対してどんな3Dプリンターを買えばいいのか?」は特に力を入れて文章を考えたので、皆さんに伝えられていると嬉しいです。
3Dプリンターを扱うのはハードルが高いと思われがちですが、自分で3Dモデリングができなくても、インターネットからダウンロードしてきたデータを印刷するだけで楽しいですし、フィギュア等のデータを販売しているサイトもあります。トラブルが起きても有名なモデルの3Dプリンターであれば日本語で情報が公開されていることも多いですので安心して3Dプリント沼に落ちてきて下さい。
皆さんや自分自身にとって有益な情報をまとめて公開していきますので是非Twitterのフォローをしていけると嬉しいです。(質問などのやり取りもTwitterのほうが圧倒的に楽でレスポンスも早いと思います。)
最後までご覧いただきありがとうございました。是非当ブログの他の記事もお読み下さい!!
以上YOHAKUでした。
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