富士フイルムのカメラを手に入れたばかりの頃、お金にあまり余裕がなく、まず欲しかったのが1本で何でもこなせるレンズでした。
そんな時に見つけたのが、タムロン18-300mm F3.5-6.3。超高倍率ズームで、しかも新品で7万円台というコストパフォーマンスの高さに惹かれて購入しました。広角から超望遠まで対応できて、正直「これ一本でしばらく撮れる」と思えるレンズでした。
けれど最近は、XF35mmF1.4やXF16-55といった、純正の高画質レンズをメインに使うようになり、タムロンの出番はめっきり減っていました。そして、「いずれはXF90mmF2を買いたい」という想いもあり、買い替え資金に充てようと18-300mmを売ろうか本気で悩んでいました。
その決断をする前に、「最後にもう一度だけ、このレンズで撮ってみよう」と思い、小田原フラワーガーデンに足を運んだのです。
■ タムロン18-300mmの基本スペック
スペック項目 | 内容 |
---|---|
価格 | 約72,000円(2025年7月30日現在) |
焦点距離 | 18-300mm(35mm換算:27-450mm) |
開放F値 | F3.5-6.3 |
最短撮影距離 | 0.15m(広角端)〜0.99m(望遠端) |
フィルター径 | 67mm |
手振れ補正 | 搭載(VC・動画AI補正付き) |
防塵防滴 | 簡易防滴構造(シーリング処理あり) |
長さ・重量 | 約130mm / 約620g |
スペックから見ても「1本で旅が完結する」性能があります。特に、0.15mまで寄れる最短撮影距離は実際の撮影で想像以上の威力を発揮しました。
■ 手に持って感じた操作性
撮影前にまず感じたのは、望遠にズームした際の長さと重み。18mmから300mmまで引き出すと、レンズは210mm近くまで伸び、ズーム時のトルクもやや重め。片手でサクサク操作するというより、両手でしっかり構えて扱うレンズです。


X-T5でももちろん使えますが、個人的にはX-SやX-Hシリーズなど、グリップがしっかりしたボディとの相性が良いと感じました。X-EやX-Proシリーズだとバランスが悪く、長時間の撮影では手に負担がかかるかもしれません。


■ 花に寄って、ズームして──実際の撮影で見えた「強さ」
撮っていてまず驚いたのが、本当に寄れること。
花にぐっと近づいて、レンズ先端が触れそうな距離でもしっかりとピントが合います。まるでマクロレンズのような使い方ができ、ダイナミックなクローズアップが可能です。

18mm (35mm換算:27mm)/ F4 / 1/800秒 / ISO125 / フィルムシミュレーション:Velvia(ビビッド)
さらに、晴天で光が十分な場面では、望遠側でもシャッタースピードを稼げるため、手持ちでの撮影もブレにくい。300mmでの撮影でも「手振れ補正VC」がしっかり効いてくれます。

300mm(35mm換算:450mm)/ F6.3 / 1/450秒 / ISO640 / フィルムシミュレーション:Velvia(ビビッド)
そして何より、富士フイルムの色とタムロンの高倍率ズームの組み合わせがとても便利で楽しい。花の鮮やかな色彩も、背景の自然なボケも、気軽に美しく撮れてしまう。このお手軽さは想像以上でした。

174.3mm(35mm換算:261mm)/ F5.6 / 1/300秒 / ISO125 / フィルムシミュレーション:PROVIA(スタンダード)

300mm(35mm換算:450mm)/ F6.3 / 1/450秒 / ISO320 / フィルムシミュレーション:クラシックネガ

Velviaは非常に鮮やかで植物撮影に便利ですが、
PROVIAやクラシックネガも本当にきれいに映ります。
■ 使用感のまとめ──単焦点と比べてどうか?
✅ 良い点:
- 18mmから300mmまで1本で対応可能な守備範囲の広さ
- 620gと300mmクラスとしては軽く、旅にも持ち出しやすい
- 被写体に触れるレベルで寄れるハーフマクロ性能
- 雨天時にもある程度使える簡易防滴仕様
植物に寄った撮影だけでなく、18mm(35mm換算:27mm)の広い画角でその場全体を移すこともできます。
⚠️ 気になる点:
- やはり単焦点レンズと比べると、画質に差を感じる。
- 200mm〜300mmにズームする際、ピントが外れて合いにくくなることがある
「写りの良さ」だけを求めると不満は残るかもしれません。でもこのレンズの本質は、「1本でどこでも撮れる」という自由さにあります。
■ 売らなくてよかったと思った理由
正直、売るつもりで持ち出したこのレンズ。でも、撮っているうちに「やっぱりこれ、手放せないかもな」と思い始めました。
たとえば、誰かと旅行に行ったとき、レンズ交換する余裕なんてない時がほとんど。集合写真も、風景も、花も、食事も、望遠で動物を撮るのも、この1本で対応できるのはやっぱり大きな魅力。
使っていなかっただけで、改めてその“便利さ”を実感しました。
■ おわりに──万能ズームだからこその価値
XF35mmF1.4のような単焦点レンズは、時に「これは自分が撮ったのか」と思うような写りを見せてくれる。でも、それにばかり頼っていると、タムロン18-300mmのような「常に安定して80点を出してくれるレンズ」のありがたさを忘れてしまう。
このレンズは、旅行、日常、マクロ、望遠、スナップまで全部こなせる。焦点距離の試し撮りにも向いているので、初心者の「自分はどんな画角が好きなんだろう?」という問いにも応えてくれます。
執筆時のリセールバリューは3万円前後。売ることを前提すれば、実質4万円程度で“万能な経験”を買えるかなりコスパの良い買い物ではないでしょうか。
他の作例


69.2mm(35mm換算:103.8mm)/ F5.0 / 1/320秒 / ISO125 / フィルムシミュレーション:Velvia(ビビッド)


64.3mm(35mm換算:96.45mm)/ F5.0 / 1/340秒 / ISO125 / フィルムシミュレーション:クラシックネガ


59.9mm(35mm換算:89.85mm)/ F4.5 / 1/350秒 / ISO125 / フィルムシミュレーション:Velvia(ビビッド)


18mm(35mm換算:27mm)/ F3.5 / 1/320秒 / ISO125 / フィルムシミュレーション:Velvia(ビビッド)


161mm(35mm換算:241.5mm)/ F5.6 / 1/240秒 / ISO1250 / フィルムシミュレーション:Velvia(ビビッド)
撮影機材
レンズ


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